2017年01月

新年も七草が過ぎました。
 例年ですと、とうの間に年頭の思いを纏めているのですが、今年はもやもやとしたままで今日まで過ぎてしまっています。その原因は、内外の世相が混沌としていて自分の頭を整理できていないことにあります。

 イギリスのEU離脱、トランプの当選など社会不安を背景としたなかでの多数国民の行動が思いもよらない方向を向いていることを見せつけられていること、この流れにはフィリピン大統領の言動も含まれます。いわゆるポピュリズム、右傾化、ナショナリズムの台頭そしてヘイト的言説の現象は社会不安定化の兆候であり、動向も気にかかりますが、グローバルなこの社会では瞬時に我が身に降りかかる問題として捉えていくことが大切だと思います。

 世相としては、老後将来への不安、社会保障への信頼低下、低所得層の拡大とそれが派生する問題が頭にあります。これは国づくりの問題と捉えています。少子高齢化社会、成熟国家での経済成長のあり方です。経済成長だけを求めるあり方に、本当にこの道しかないのだろうかと思います。少なくともギャンブルを経済政策の主要事項にするような議員の矜持を疑います。団塊世代の私としては、2025年をどのように迎えるのか心配しています。

 集団的自衛権の問題にあたっては、違憲論議は盛んに行われましたが、国際社会での日本の進むべき道についての議論が深まらなかったように思います。あくまでもアメリカとの同盟強化という道は、いわゆるアメリカの戦争への荷担を余儀なくされるということを含みます。アメリカといえども、先のイラク戦争に見られるように必ずしも理性ある武力行使をするとは言えません。日本(国民)の主体性と尊厳の在処が見えにくくなっているように思われます。日本が進んでいる道はどのような道なのかということに素朴な疑問を抱いています。
 
 混沌、不確定。どうやら先の見通しのつかない事態にあることだけは確かなことのようです。トランプ政権の発足、イギリス最高裁の判決、フランス・ドイツの選挙(もしかしたら日本も総選挙)などその都度世論を騒がせることが目白押しにあるようです。
 どうやら鳥を騒がせる一年になりそうですが、夜鳥騒ぐ音を大群の襲来と間違えないよう、地に足をしっかりつけていなければと思います。

2016年の読書メーター
読んだ本の数:27冊
読んだページ数:7828ページ
ナイス数:58ナイス

■土壌生態学入門―土壌動物の多様性と機能
読了日:12月26日 著者:金子 信博

■学問の方法 (人間選書)
読了日:12月15日 著者:守田 志郎

■農法―豊かな農業への接近 (人間選書)
読了日:12月07日 著者:守田 志郎

■表情 (弘文堂・思想選書)
読了日:12月04日 著者:広松 渉

■農業にとって技術とはなにか (人間選書)
読了日:11月20日 著者:守田 志郎

■今こそマルクスを読み返す (講談社現代新書)
読了日:10月31日 著者:廣松 渉

■世界の共同主観的存在構造 (講談社学術文庫)
読了日:10月13日 著者:廣松 渉

■思想を織る (朝日選書 (275))
読了日:09月12日 著者:武谷 三男

■罪つくりな科学―人類再生にいま何が必要か
読了日:09月09日 著者:武谷 三男

■武谷三男著作集〈第1〉弁証法の諸問題 (1968年)
読了日:09月07日 著者:武谷 三男

■2050 近未来シミュレーション日本復活
読了日:09月05日 著者:クライド・プレストウィッツ

■哲学者廣松渉の告白的回想録
読了日:08月17日 著者:廣松 渉

■哲学入門一歩前-モノからコトヘ (講談社現代新書)
読了日:08月13日 著者:廣松 渉

■新哲学入門 (岩波新書)
読了日:07月28日 著者:廣松 渉

■土壌学の基礎―生成・機能・肥沃度・環境
読了日:07月13日 著者:松中 照夫

■下り坂をそろそろと下る (講談社現代新書)
何とも重たい本。「重たい」のは、日本の抱えている課題への掘り下げが一段と深く、これまでない視座と見解を提供していること。更に成熟・低成長社会を「下り坂」と捉え、それが「リアリズム」とするその思想に対して。団塊の私との世代隔絶をも感じる。すでに老境に入りつつあり、この閉塞を打開する気力も力量も消え失せ、ただ憂うるばかりを自嘲しているかの自分を重ね合わせて「重たさ」が倍加してしまう。光明は地方に「文化」を興すことが生きる道としていることであった。「生きる」に値する日本国に成長できることを祈る。
読了日:07月03日 著者:平田 オリザ

■最初の哲学者
読了日:06月26日 著者:柳 広司

■哲学の現在―生きること考えること (岩波新書)
読了日:06月16日 著者:中村 雄二郎

■年表で読む|哲学・思想小事典
読了日:06月09日 著者:ドミニク フォルシェー

■人間の尊厳について (1950年) (哲学叢書〈第54〉)
読了日:06月01日 著者:ピコ・デラ・ミランドラ

■思想史のなかの科学 (平凡社ライブラリー)
読了日:05月28日 著者:伊東 俊太郎,村上 陽一郎,広重 徹

■読まずに死ねない哲学名著50冊 (フォレスト2545新書)
読了日:05月19日 著者:平原 卓

■物語 哲学の歴史 - 自分と世界を考えるために (中公新書)
再読で「物語」のストーリーをより鮮明に読み解くことができた。特に「人間(精神)の存在論」の視座を共有することができ物語を堪能させてもらった。しかしながら現代哲学(第4章)について、実存思想が閉塞していく過程と最終ページの哲学の将来についてを理解することに困難性を感じた。最終ページはクライマックスとなるべき哲学の将来についてを述べるステージであるが、そこでの「これからどこへ行くのか」の問いは平板的で単調に思えた。問いそのものが哲学のテーマだから将来のことは不明ということか。そう考えると寝れぬ夜が続きそうだ。
読了日:05月06日 著者:伊藤 邦武

■イラスト西洋哲学史
読了日:03月22日 著者:小阪 修平

■土漠の花
安保体制が戦争を想起させる中、今日的なモチーフ。場面は海外派遣された自衛隊下士官以下の小部隊の戦闘。戦争ではなく戦闘である。今日的モチーフを具体化するため周到かつ入念に資料情報を集めてよく勉強した上で構想を練ったという感じがする。入念に考えを巡らせた筋書きは想定内の合理でありサプライズがない。その意味でアクション映画的な面白みはあるがそれ以上の深みを感じることができなかった。その原因は、最初の武器使用における課題は自衛隊にはなく政治と国民にあるから。それをフィクションとするのは無理なことかもしれない。
読了日:03月17日 著者:月村 了衛

■時代の憂鬱 魂の幸福――文化批評というまなざし
読了日:03月16日 著者:張 競

■哲学用語図鑑
手にする前は辞典を想像していたが、れっきとした哲学史であった。それも時代を活躍した哲学者とその思想をイラストを交えて実に理解しやすくできている。時代を生きた哲学者を「用語」をもって形容する編さんは理解しやすい。俯瞰できるようになった。それと同時に細部を知りたくなり、あれやこれやと思索をめぐらす自分がいた。座右の書としていつでも手にとれるようにしておきたい。いい本に出会えた。
読了日:03月10日 著者:田中正人


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