2018年02月

 アスパラ栽培技術に関連する資料を調査している中で、オークションで手に入れた専門書を紹介します。
 「蔬菜栽培技術5アスパラガス」(沢田英吉 誠文堂新光社)です。今から55年前の昭和37年に出版された古書ですが、驚きが詰まった本です。現在出回っている同類の本とは随分と違いがあります。

 目次を書き出してみます。

 第1章 来歴、現況および将来
  Ⅰ来歴、Ⅱアメリカにおけるアスパラガスの現況と将来
  Ⅲ我が国におけるアスパラガスの現況と将来
 第2章 植物学的性状
  Ⅰ名称、Ⅱ性状、Ⅲ花、Ⅳ果実、Ⅴ種子、Ⅵ発芽、Ⅶ地下茎
  Ⅷ茎、葉および擬葉、Ⅸ根、Ⅹ雌雄株の性状比較
  Ⅺ芽の数と春の若茎数および成茎数
  Ⅻ前年の成茎数と翌春の若茎数
 第3章 環境との関係
  Ⅰ気候とアスパラガス、Ⅱアスパラガスの生長と温度との関係
  Ⅲ土性
 第4章 栽培
  Ⅰ品種、Ⅱ育苗、Ⅲ本圃、Ⅳ苗の定植、Ⅴ肥料、Ⅵ収穫
  Ⅶ採種、Ⅷアスパラガス畑の寿命とその更新、Ⅸ病虫害
 第5章 化学と加工
  Ⅰアスパラガスの化学、Ⅱアスパラガスの加工概説
 追補 アスパラガスの同化能力

 栽培技術を総体的に網羅しつつ、さらに現在でも話題となっているテーマが、すでに取り上げられていることに驚きをもちます。
 例えば、
・「本圃」の項では、圃場選定の要件と土性改良について、
・「苗の定植」では、深植えと浅植えの利害について、
・「肥料」では、過剰施肥への警告と施肥の適正量の検討が、
・「収穫」では適正な収穫期間について、
・「畑の更新」では、アレロパシーがすでに取り上げられる
 など今まさに課題になっている事柄が解説されています。

 新たに発見できた技術や知見があったことも特筆しなければなりません。
・「苗の定植」で定植前に泥に浸す方法や、苗の進行方向をそろ
 定植することの考慮や、
・アレロパシー解消対策として4年間の緑肥栽培でも改善できなか
 った試験成果が紹介されていること、
などです。

 今ここに例示したテーマは、栽培現場で直面する問題や、疑問などにつながるものです。実に現場の人の琴線に直接触れてくれて、寄り添うものです。「そうなんだよ、これを知りたかったのだ」というものです。

 これが、今の時代の栽培技術書には見られないことだと感じます。研究が高度化する現代では「専門」へと進化しているのかもしれません。しかしながらそのことは「分化」への道でもあり、全体像が見えなくなっていることでもあることを痛感させられます。
 全体を見渡すことの実体験をした思いがします。この体験を今後に反映していきたいと思います。


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 立春が過ぎ、流氷が着岸し、札幌雪祭りが開催中、冬も盛りが過ぎようとしています。春を待ち望む時期になってきています。

 前回の投稿から間が空きました。前回投稿したレポート『「肥沃な土壌に」に関する一考察』 は、
1.土壌は生態系の一構成員であり、総体的に捉え全体(構造と機能)を明らかにすることにより、土壌を構成する要素個々の関係性が判明する。 
2.生態系は均衡(バランス)が原理である。故に土壌も均衡系が存在原理となる。土壌を構成する要素の各々は常に均衡(バランス)を保つ力学の上に成立している。
 という、土壌を捉える視点の立脚点を原則論的に考察してみました。
 
 現在、次のレポートを準備中です。テーマは「アスパラ根系を持続的・健全に生長させる土壌・施肥管理」です。
 アスパラの栽培特性は、1.多年草 2.深根性 3.収量は根量と貯蔵根への貯蔵糖の量で決定される ことです。
 アスパラ営農は、定植の際の土壌管理の成否によって、決定されるといっても過言ではありません。
 それにもかかわらず、収量と株の寿命は、生産者により、また地域により振れ幅が大きいのが実情です。私の12年間のアスパラ栽培も、アスパラを持続的に生育させるという面からは、思うようにはできませんでした。
 
 アスパラは通常10年が寿命と言われていますが、そのような中、20年以上にわたり栽培できている篤農家がいます。しかしながら、そのようにできている理由を知りたいと思っても、どうもよく判りません。自分の圃場に応用が効かないのです。そしてなによりも、自分の圃場の何が悪いのかも、本当はよく判っていないのではないかと思わされます。

 そこで、課題に基づき、問題分析を深めて、知りたいことの根源を追及するように、心がけて議論を進めていきたいと思います。

 最初は、「深根性」をテーマにしたいと思います。
 アスパラは深根性ですが、根が土壌の深層に伸長する際、根の伸長を阻害する地層に遭遇すると、それ以上根は伸びません。
 ところが、例えばセスバニアなどの緑肥は硬盤層を貫通する機能を持っているようです。赤クローバはどうでしょう。
 深根性といっても、根の伸長を阻害する土層で止まる植物と、それを貫通する植物がありそうです。
 アスパラは、100センチ以上の深層まで根を張るそうです。経営栽培にするに、そこまで必要かは論議が必要ですが、少なくともある程度の深層が必要です。
 ところが、ここで問題です。深層まで均一な土壌で栽培できればいいのですが、そうではなく、深層の土壌改良を余儀なくされる場合、その土壌改良は、たやすいことではありません。
 そこで、アスパラの根が深層に伸長できるように、その阻害土層を事前に土壌改良する方法が求められることになるわけです。

 というわけで、次回は、「深根性緑肥の深層への伸長能力と深層土壌改良能力」をテーマとして、研究資料等を調査した成果をレポートしたいと思います。

 ご意見、ご指導・ご教唆をお待ちしております。

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