カテゴリ: 土壌医の日記

農業全書「農業全書」は全十巻で構成され、第一巻が「農事総論」で農業技術全般が、二巻以降が野菜・草木等の栽培法が論じられている。第一巻には十項目が展開されているが、その筆頭が「耕作」であり、最も多くの頁を割いていることから、「耕作」が農業技術で論じる最重要事項であると考えていたと理解できる。

「耕作」で私は次の3点を感じました。
・農法は、天候気象、地形、土質、風土などの自然環境に順応した術、すなわち「天地生養」、「陰陽和順」の思想を根源として論じられている。
・農人は「土地の宜しき(よろしき)」に従うべしの言がある。「宜しき」は「多様な個性」のことと理解する。風土の固有な多様性を土台として、それに順応した農業技術が論じられている。これは現代の共通、普遍的な技術論と対峙するものと考える。
・これらの思想を基調として農業全書が展開する農耕技能は、現代の機械による力ずく農耕、化成肥料・化学農薬の多投、によって失いつつある土壌の本来的・健全な機能の在り処を見つけることができる思いがする。

 この理解に基づいて「第一 耕作」に3つの節を新たに立てて、分類整理、要約してみました。各項には条項内容の趣旨を代表すると考えた(タイトル)を付記しました。文中の用語には、(よみがな、注釈)を所により付記してありますが、私の拙い解釈ですので誤りがありましたら悪しからず願います。要約は、原文を約1/3に縮小しました。また、項目順も一部入れ替えてあります。

巻の一 農事総論
第一 耕作
第一節 総論
(天地生養)
・それ農人(のうじん)、耕作のこと、その理り(ことわり)至りて深し。
 稲を生ずるものは天なり。これを養うものは地なり。人は中にいて、天の気により土地のよろしきに順ひ(まつろひ;したがう)、時をもって耕作を勤む。もしその勤めなければ、天地の生養も遂ぐべからず。(人の勤めがなけれが、天の稲を生ずる活動、地の稲を養う活動は、遂げることはできない。)

(陰陽和順)
・ およそ土は転じかゆ(掻ゆ)れば陽気多く、また執滞すれば陰気おおし。
 それ陰陽の理りは、至りて深しといえども、耕作に用いる所は、その心を付けぬれば悟りやすし。
 先ず、土の湿りたるは陰なり。乾きたるは陽なり。粘り塊たるは陰なり。重く強くはららぐ
(ばらばらになる)類は陽なり。これらの類を、おしはかりて土地の心を知るべし。仮りそめにも、陰気の陽気に勝りたざるように分別し、陰陽のよく調ふる(となうる;ととのえる)計らいを専らとすべし。
 晴れたる日に耕し、その土白く乾きたる時かき砕き、雨を得てうゆる(植える)と、また畑ものは、日と風を得て中打ち(なかうち:中耕)し、白く干して培うこと、これ皆、内に陽気を蓄え、外潤いを得る時は、陰陽和順するというものなり。
 農人よくこの理を辯へ(わきまへ)、およそ耕し、うゆる(植える)事ごとに、皆陰陽を調へて(ととのえて)天地の徳を助くべし。

第二節 心得
(田畑輪換)
・田畑は年々に変え、地を休めて作るを良しとす。しかれども、地の余計なくて、変えることのならざるは、植えものを変えて作るべし。
 所により、水田を一、二年も畑となし作れば、土の気が転じて盛んになり、草が生ずることなく、虫もなく、実り一倍もあるものなり。
 さて、畑ものにて土気弱りたる時、また元の水田となし稲を作れば、これまた一、二年も土地転じて大利を得るものなり。されども、これは上農夫のなす手立てなり。

(深耕浅掻)
・秋の耕しは、深きをよしとす。春夏は浅かるべし。また犂くことはいかにも平らかにむら無く、かく(掻く)ことは二三遍も、いか程も精しき(くわしき)を、よしとすることなり。これかきこなすことの懇(ねんごろ)にして塊なからんがためなり。
 細かによくかきたる地は、潤いをよく保つ故、少々の旱(ひでり)にも乾かずして苗傷まず。とかく土細かにして和らか(やわらか)ざれば、作り物の利潤少し(すくなし)と知るべし。苗の根あらき土には思い合わず。糞(こえ、肥え)も、むら交じりあるゆへなり。
 また、秋耕は青きを覆うということあり。草の青く生いたるを犂きかえし置けば、その田肥えるものなり。
 初の耕しは、深きをよしとす。重ねて段々鋤くことは、さのみ深きを好まず。初の耕し深からざれば土地熟せず、重ねて鋤く事深くして生土を動かせば、毒気上にあがりてかえって植えもの痛むものなり。ただこれは荒らし置きたるを耕すことを言うなり。
 熟地を常に耕すはしからず(そうではない)。先初は薄く犂て草を殺し、段々深くして種子を蒔くべき前は底の生土を動かすべからず。種、生土の毒気に当たりて生じがたく、栄えがたし。

(膏澤潤和(こうたくじゅんわ)
・耕の本(もと)は、時を考えて土を和らぐるを、肝要とすることなり。その時分をよく知るべし。
 先ず、春はこほり(凍り)溶けてより地の気初めて通じ、土和らぎ解くる時なり。また、夏至は、天気初めて暑し。されども陰気はこの時初めて兆す。この時も又、土解くるものなり。また、夏至(6月21日)の後九十日(9月22日、秋分)昼夜等し。この時も又天気和す。
 凡そこれらの時をもって、田畑を耕せば、一度にして五度にも当たるものなり。これを名付けて「膏澤」(こうたく;肥えて潤いのある土地)といいて、土の潤い和らぐ時なり。皆これ耕してすぐれてよき時なり。
 また、春の耕しは凍り(こおり)いまだ溶けざる中、春の陽気の通ぜざるに必ず耕すべからず。寒陰の気を覆い置くこと、甚だ悪しきことなり。
 また、堅く強き土、黒土の粘りたるなどは、春も少し遅く耕すべし。これらの土は塊を砕き置きて、草少し生じたるをみて又耕し、小雨の後又耕し、かきこなして塊少しもなきようにし置きて時を待つべし。これを強き土を弱くするの図りごとというなり。
 もし未だ春の気も通ぜず、潤いも無きに、強いて耕せば、塊砕けず、草も腐れ爛れず(ただれず)して、植えて後、苗と草と一つ穴より生ひ出でて、中うち(中耕)、芸る(くさぎる:除草)こともなりがたく、糞(肥え)もきかず、地痩せてあるるものなり。
 春和の気通じ、暖かなるに潤いを得て耕し、草、青く生じて又耕し、塊少しもなく、こなしたる地は、土和らぎ潤いて草も爛れ(ただれ)つぶれて、痩せ地も良田となるものなり。

(犂一擺六(りいちはいろく)
・犂一擺六(りいち はいろく、はい;ひらく)という事あり。
 これは、一度犂ては六度かきこなせ、ということなり。常に犂くことの深きをのみ専らとして、掻くことのくわしきが肝要とすることを知らず(??ということを知らないでも)、只幾度も掻き熟したるに、糞(肥え)を入れ、うゆ(植ゆ)れば、土よく和合して細根よく生じ栄ゆるものなり。
 粗がきしたるは、土熟せざる故、種を落として後、苗を見るといへども、苗の根粗き土に痛み、土、気と思い合わずして日痛み、虫気その他色々の病を生ずることあり。
 実りのよからんことを思はば、本法のごとく一度耕して六度までこそ掻かずとも、底まで塊なきを詮(せん;肝要)とすべし。    
 苗の立根が、底の細土と思い合わざれば、実りよからぬものなり。ものごと、殻子は、立根より生ずると心得べし。しかる故に、根の下に塊もなく、また苦土(にがつち)もなきようにこしらえ、糞(こえ、肥え)も根の下によく行き渡る心得すべし。
 ただ又、土の性により、しげく掻くべからざるも、間にはあるべし。細砂の地、弱く柔らかなる地、灰のごとく力なく軽き土などは、さのみしげくは掻くべからず。此等の土は少々塊ありとも、性をもたせ置き、力とすることなり。一遍には思うべからず。所によりて時によりて機転を用ゆべし。

 第三節 農具
(農具選得(農具を選び得す)
・総じて、農具を選び、それぞれの土地に従って宜しきを用ゆべし。
 およそ、農器の刃、はやき(捷き)とにぶき(鈍き)とにより、その功をなす所、遅速はなはだ違ふことなれども、愚かなる農人は、大方その考えなく、わずかの費をいとひて、能き農具を用ゆることなし。
 さて、日々に営む仕事の快くてはか行くと、骨折り苦労してもはかのゆかざると、一年を積もり一生の間を計らんには、真に大なる違ひなるべし。特に、土地多く、余りありて人少なく、その人力及び難き所にては、とりわけ牛馬・農具に至るまで優れて良きを用ゆべし。
 されば、古き詞にも、たくみ(巧み)その事をよく(良く)せんと欲する時は、先ず其の器をとくす(得す)と見えたり。
・耙(むまぐは;マンガ、馬鍬)の歯の長きと、短くてしげきとを、段々に調へ置き、その宜しきに従いて用いるべし。歯の荒きばかりを用いては、細かによくかきこなし熟しがたし。
 農書に言えるは、茂木のもとに豊草なく、大塊の間に美苗なしとて、茂り栄へたる木の下にはうるわしき草無く、荒き塊の間には見事なる苗は育たぬものなり。これ田畑に草を置き、塊ながら、種ゆべからざる事を言えり。深く耕し、日に合わせ、細かにかき、細土と糞(肥え)と和し、熟するを専らにするなり。
 この如く、よく地をこなして、うゆ(植ゆ)れば、大方の旱に会いてもさのみ傷まず、色々の癖、災難も逃れて、全く損亡して手を空しくするほどのことは無きものなり。これかねての養い善きによりて、作り物の性強ければなり。例えば人も無病なる強き者は外の邪気に侵されざると同じ理なり。

キャプチャ
図は農水省の作物統計調査資料(2017年長期累年)に基づいて2002年~2017年の15年間にわたる北海道のアスパラガス作付面積と10アール当りの収穫量をグラフに加工したものです。
 10アール当たりの収穫量は、250~300Kgとほぼ横ばいですが、これは道施肥基準に示す400Kgを大きく下回る成績です。歴史を遡ると、1970年代の概ね10年間は350~400Kgの水準を維持していますが、1985年以降からは300Kgを下回るレベルとなっています。35年間低いレベルのままにあるということです。全国平均値は、2013年以降は概ね500Kg以上であり、増加傾向にあります。施設栽培(ハウス栽培)が主体の西南暖地のデータを含んでいますので、露地主体の北海道とは一概には比較はできませんが、本州での反収が増加傾向にあり、北海道では基準を下回るレベルで横ばいにあることは、北海道における反収についての特性を理解できる指標であると思います。
 作付面積については、2,010ヘクタールから1,310ヘクタールと700ヘクタール、35%減少しています。この期間の全国の作付面積は1,100ヘクタールの減少ですから、この70%を北海道が占めていることになります。北海道のアスパラガス作付面積の減少率が大きいことが理解できます。
 作付面積の減少は道全体の収穫量に反映します。この期間の年総収穫量は平均5,200トンですが、2010年以降は漸減し、直近5年間の平均収穫量は4,300トンまで落ち込み、2017年は4,000トンを大きく割り込みました。収穫量の全国シェアは2009年の19.2%をピークにして、2017年は13.2%にまで落ち込んでいます。1924年、北海道においてアスパラガスが最初に栽培され、それから全国第一の産地としての地位を築いてきていますが、それも危ぶまれる現況です。
新規ドキュメント 2020-02-17 10.05.27_1
 一方、2020年2月17日の朝日新聞北海道版にアスパラガス生産農家を目指している新規就農者の記事が掲載されました。アスパラガスの高い経営的価値に着目して持続的営農を目指している若者について紹介しています。
 この若者が考えたように、アスパラガスは本来高い経営的価値を持っているものだと私も考えています。それなのにアスパラガスの生産王国であるはずの北海道では、
 なぜ作付面積が縮小する一方なのでしょうか?
 なぜ低い生産性のままなのでしょうか?
 私は、2003年から2015年まで札幌郊外で2ヘクタールの露地アスパラガスを栽培しました。定年後の新規就農です。12年間のアスパラ栽培は、結果からするとごく普通の経過をたどったことになりました。すなわち、定植後の4~7年目ころは最盛期を迎え、この間は毎年8トン以上を出荷しました。反収としては500~600Kg前後はありました。しかしながらその後、次第に生産量は下降しはじめ、10年目にはピーク時の半分ほどの収量に落ちたところで、私のアスパラ営農は終えることにしました。当初栽培期間を15年ほどと考えていましたので、予定より5年ほど早く畑を閉じることになったわけです。改植と新たに圃場を設けて新植することの2つの方策は検討しましたが、具現するまでには至りませんでした。
 アスパラガスは永年作物です。寒冷地である北海道では15年以上できれば20年くらいは、安定的に生産を持続することが求められます。そして、改植による栽培の継続が滞りなくできることも重要です。これらを具現する技法(農法)が必ずしも確かではないように感じています。
 アスパラガスの高い収量性と持続性ある栽培については、北海道が長年抱えてきている課題と感じます。今後の研究開発が望まれます。

アスパラガスの連作障害を考える
 10年以上も栽培を継続してくると株が老化して、収量も品質も低下してくるのが通例です。そうすると、新しい株に更新する必要が生じてきます。
 一方、アスパラガスには連作障害があるといわれています。障害は作付してから数年後に発生するそうです。作付後数年間は正常に発育するのですが、収穫段階になろうとする時に生育障害が発生するというものだそうです。こんな事態になったらたまったものではありません。
 ところが、アスパラガスの連作障害について「本当にあるのか?」という声を聞くことがあります。それは、連作障害の原因の一つされるアレロパシー作用について、その原因物質が今だに特定されていないことにあります。アスパラガスのアレロパシー障害を疑問視する声を種苗販売業者から聞いたことがあります。
 更にアスパラガス連作障害の実態がよく判らないということにも、連作障害に対する理解が進まない原因があるように感じます。連作障害発生の実態、改植しても問題が発生しなかった実例などについての情報を得ることができないままでいます。
 アスパラガスの改植は「ジレンマ」です。老朽化した圃場を前にして、この畑に連続して作付していいのかどうか判断する規範がないからです。かといって遠くに新たな圃場を設けるのは栽培管理上、収穫管理上たやすいことではありません。
 2014年6月の農研機構「野菜茶業研究所ニュース51」に「アスパラガスの連作障害を回避する」
(農研機構露地野菜生産技術研究グループ 浦上敦子)という特集が組まれました。
目の前の改植をしたい圃場の「連作危険度」を評価判定し、危険度の大きい場合の障害回避の対応策を紹介しています。細部は、改植マニュアルとしてウエブで公開されています。
vt_asparagus_kaishoku_manual_20140501_1https://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/publication/pamphlet/tech-pamph/051696.html
 着目したのは「改植時のフローチャート」です。連作障害危険度の評価判定の規範が示されているのです。
 vt_asparagus_kaishoku_manual_20140501_6








 フローでは、圃場の排水性(物理性)の保持は前提とされています。連作障害危険度の判定基準は、塩類集積度についての化学性と主体はアレロパシー・フザリウム・ウイルス・疫病についての生物性を診断するものとなっています。
 危険度が評価判定できるのであればジレンマに陥ることはないと思います。画期的な研究成果と思います。
 ところで、この研究成果はアスパラガス圃場の土作りに大きな示唆を与えていると思います。危険度評価のフローの各段階の要素は、土壌が保持していなければならない機能を表していると考えられます。
・物理性として;排水性(透水性)
・化学性として;塩基バランス
・生物性として;細菌、糸状菌、ウイルスの生物性バランス
 廃耕し改植を余儀なくされる圃場の土壌は、これらの土壌機能がアスパラの生育を阻害するまでに低下した「劣化土壌」となっているのではないだろうか。
 アスパラガス生産農家には20年を優に超えて、持続的な栽培を営む生産者がいらっしゃると聞きます。そのような圃場での特に深層土壌の形態はどのようになっているのか、ぜひ明らかにしてほしいと思います。
 アスパラガスを20年以上にわたり持続的に栽培できる土壌を維持増進する。アスパラガスの改植と連作障害について考えていくと、結局は「持続的な栽培を支える土作り」に行きついてしまいました。

幌は銀色の世界へと突入しました。
春以降ずっとブログへの記事を書いていませんでした。
ようやく余裕が出てきましたので、これから逐次レポートしていきたいと思います。
とりあえず、ヤフーブログ移行の締め切りが迫っていますので、ブログデータを引っ越しさせました。
「肥沃な土壌」について、特にアスパがガスの土壌について、あれこれと考えてきたことをその都度まとめてきた記録です。試行錯誤の記録でもありますの保存しておきたいと思いました。

アスパラ畑の春の手入れが終ったところで、モミガラ堆肥の仕込みにとりかかりました。
アスパラ圃場へは継続的な堆肥の散布が求められます。しかしながら、立茎後の畝間へは大型機械の投入は困難です。小型機械では必然的に小粒のさらさらな堆肥でないと作業がうまく運びません。完熟堆肥はこの条件に適合しますが費用がかさみます。
そこでモミガラに着目しているわけです。とはいってもモミガラは容易くは発酵分解してくれないところが難点です。
昨年は発酵温度は70度までは上昇したのですが、二日もすると下降し始めるという結果に終わりました。C/N比は25~30に調整し、積み上げも1メートル以上にしたし、水分管理も不足はありませんでした。発酵温度が持続してくれない原因はその時点では理解できませんでした。
ふとしたことで「蓄熱」を知ることになりました。発酵温度は蓄熱によりその温度が保たれると言うことです。好気性発酵には酸素の供給が必要であり、そのためには「適度の孔隙」がなくてはいけません。しかしながらこの孔隙が大きすぎると蓄熱を妨げるとのことでした。モミガラの場合、単に積み上げるだけでは孔隙は大き過ぎているのではと思いが至りました。そうです「踏み込み」です。
今年のモミガラ堆肥には「蓄熱する適切な孔隙管理」を着眼としました。そのためには踏み込みをしっかり行うことですが、更にこれの効果を高めるために「土」を混入させることにしました。
仕込み作業は4月23日にしました。堆積したのは約10立米です。


2019-04-23 16.52.31

2019-04-22 13.18.57土を混入したうえに米ぬかを投入したところ。







2019-04-22 13.56.25約30センチ堆積してしっかりと踏み込みました。土が混っているため踏み固め沈んでいる感じがします。






2019-04-22 14.11.25
トマトの茎葉残さをサンドイッチします。これを繰り返して約1.5mに積み上げました。





2019-04-22 17.24.414月23日に、積み上げしたときの温度は13℃です。

その後の経過は逐次追加記録します。
4月24日:19℃
4月25日:22℃
4月27日:30℃
4月28日:35℃
4月30日:42℃
5月01日:45℃(上昇幅が小さくなっています。60℃までいくのか心配)
5月04日:51℃(スローテンポですがようやく50℃を超えてくれました)
5月05日:49℃
5月06日:48℃(ここで低下しますか?普通は最高温度は数日間は維持されるのに。どうしたことでしょう。)
5月07日:45℃(降下傾向が明瞭になりました。残念ですがやり直しです。)
5月08日:45℃(変化なし。様子見にします。)
5月09日:47℃(おやっ!上昇してきました。切り返しはしていないのですが。)
5月10日:49℃(どうしたことでしょう!!どうやら発酵活動は継続されているようです。もしかして米ぬかによる一次発酵が04日の段階で終了し、その後二次発酵に移行しているのでしょうか。目に見えない微生物の活動状況を判断するのは難しいです。)
5月11日:49℃
5月13日:48℃
5月14日:38℃(温度の低下は、堆肥に給水したからです。)
 含水量が低下しているようなので、堆肥の頂上に数か所穴をあけて、そこから給水しました。もみ殻ですので水は吸い込まれるように浸透していきます。水の浸透は同時に空気を引き込みます。堆肥の中の酸素供給になると考えています。
堆肥の現況を検土杖で調査しました。2019-05-13 10.07.32
約50㎝の深さまでのサンプルです。
層が深くなるにつれて茶色から黒褐色に濃くなっていることが観察できました。
水分は感触ですが概ね40%位かと感じました。



2019-05-13 10.27.17








5月15日:46℃(もみ殻堆肥を仕込んでから3週間が経過しました。発酵が継続できていることを確認しました。当初の目標である蓄熱はどうやら継続できているように感じます。)
5月16日:45℃
5月17日:45℃
5月18日:46℃(中温発酵で落ち着いているのでしょうか。落ち葉堆肥の場合は冬の間中積もった雪も溶けるくらい60℃以上の勢いが続いたのですが、もみ殻だけの場合の経験値がないのでこれからは試行錯誤になりそうです。)
5月19日・20日:46℃
5月21日・22日:47℃(堆肥を仕込んでからちょうど一か月が過ぎました。この間、45℃以上を約3週間持続できています。蓄熱の狙いは達成できたと判断しても良いかと思います。今後については、月末で45℃以上維持を一か月となりますので、その時点で再度観察をしてから今後の処置を考えたいと思います。もみ殻をたい肥として発酵分解させるのに必要な期間、もしくは発酵分解しているもみ殻の形態の変化などについて情報収集します。情報をお持ちの方、もみ殻堆肥の経験のある方、教えていただけたら幸いです。)
2019-05-29 11.21.08
5月30日;切り返しを行う。4月23日に堆肥を仕込み、45℃には5月1日に到達している。1か月が経過したもみ殻堆肥の状況は右の写真の通りである。中層以下は黒褐色に変色してきている。この間温度は45℃を維持してきた。含水量は握った感触ではあるが概ね30~40%程度と判断した。
 切り返しは、引き続き中温以上を維持させることを狙いに、かん水(500ℓ)と米ぬか(30kg)を投入した。切り返した堆肥の温度は35℃であった。

2019-05-29 11.22.52
6月2日:40℃
6月4日:41℃
6月5日・6日:42℃


6月30日;経過と現況
6月9日:45℃
6月14日:47℃
をピークとして、これ以降6月20日ころまで45℃を維持、6月30日現在で44℃を示しています。
切り返しでは、米ぬかと水を加えて温度の上昇を期待したのですが、切り返し以前の温度を維持している状況になりました。
もみ殻そのものは、黒褐色のサラサラとしたものになっています。生のもみ殻を握った時のとげとげしい感触は全くなく、丸くなっている感じです。
4月23日に仕込みましたので、約2か月が経過したことになります。この間、概ね45℃の発酵温度を維持して、一応は発酵分解が進んでいるものと理解します。このまま秋まで寝かしておこうかと思います。



新規ドキュメント 2019-05-28 08.53.31_1
土壌医を登録して早や3年が経過しようとしています。
今年3月、駆け込みで論文解析レポート2本、関係書籍読後感レポート2本を提出し、5月に単位が認定されのを受けて資格継続を申請しました。
この他の単位取得の活動としては、論文解析レポート1本、札幌土壌医の会主催の研修会に参加(1回)でした。
中央で行われる研修会に参加することなく、地方にいたままで継続申請に必要な単位を修得できたことにホットしています。
引き続き、次の資格継続に備えて論文解析レポートを纏めていかねばと思いますが、できれば土壌協会機関誌「土作りとエコ農業」に投稿することを目指したいと考えます。







スパラ試験圃場の14日現在の状況です。GW明け頃から少しづつ萌芽が始まりましたが、その歩みは平年よりだいぶ遅いようです。ここしばらく寒い日が続いている影響かと思います。現在の地温が13℃でした。これは一月前と同じレベルです。一か月間地温が上がっていないということです。
予報によると今週後半からは平年値の気温が期待されそうです。気温が上がってくるとアスパラはすぐにそれに反応して生長してくれますので、もう少しの辛抱だと思います。
 
2019-05-13 11.56.13
2019-05-13 11.56.38

2019-05-13 12.13.31







 山間のアスパラガス試験圃場、土手にはまだ雪の固まりが残っているのがかすかに見えますが、畑はすっかり乾燥しました。そして地表には残さがこびり付くように一面を覆っています。
DSC_0360


DSC_0368そして早くもタンポポやギシギシが芽を吹き出しています。








昨年畝間に栽培した赤クローバ、越冬しDSC_0365して見事に発芽してくれています。二年目の根耕に期待したいです。





春の手入れは、畝の残さを畝間にかき寄せることと、タンポポ、ギシギシ、芝草などの除草をして畑をきれいにします。それが済んでから春肥としてチッソ成分量で約5Kg、米ぬか75Kg/10aを散布します。表土の温度は4月16日が8度でしてが、作業が終わった19日には11度まで上昇していました。13度くらいになるとアスパラガスの発芽が始まるといわれています。GW頃には地表に芽を出してくれるかと思います。今年は3年目で、昨年秋の根の糖度が15~20度位ありましたので、今年は40日の収穫期間を予定します。楽しみです。
DSC_0376
DSC_0377






りがとうファームさん(https://aligato3.wordpress.com/)で3月10日に行われた研修会に参加してきました。「ありがとうファーム」さんは千歳市で無肥料・無農薬・自家採種にこだわり自然栽培農法を13年続けて野菜栽培している農園ですが、かねてからお付き合いのある筑波大学と東京農業大学のお二人の先生方による土壌と自然栽培についての勉強会を開催するはこびになったということでした。
 研修会の内容は驚くほど(失礼IMG_20190506_174302専門的なものでした。それは当然なことでした。筑波大学の田村先生は「日本ペドロジー学会」の会長ですし、ペドロジー土壌学の専門家でした。東京農大の中塚先生も農学博士論文のテーマが自然栽培に関するものでした。




 講義のテーマは田村先生が「土壌のスキャナ 2019-05-06_1肥沃性を考える」と題して、午前中2時間をかけて土壌学の基本的な事柄を解説していただきました。 









 午後の2時間は本日のメインテーマスキャナ 2019-05-06 (1)_1として中塚先生が「自然栽培のひみつ」と題して、先生の博士論文からその要点を分かりやすく解説していただきました。
 中塚先生の講義は、そのサブタイトルに見られるように、自然栽培圃場でも高い収量性を示している圃場を対象として、なぜ無肥料で野菜栽培ができているのか、という根源的な疑問をテーマとして土壌学という科学によって解明しようとする意欲的で尚且つ我々にも非常に関心の持てるものでありました。そして実際中塚先生の講義はこれまでにない切り口で自然栽培圃場の土壌を解明しており、説得力に富むものでした。
 中塚先生の研究成果については、博士論文「高収量自然栽培圃場の土壌微細形態学的特徴と土壌品質評価」(中塚博子 2016.1 http://jairo.nii.ac.jp/0025/00040762 )を参照ください。

 さて、研修会の全貌をここで紹介するのはその量が多すぎるので、私が特に注目したことを記したいと思います。
 それはペドロジー(pedology:土壌生成・分類学)という土壌学の立場についてです。土壌学において2つの学問的区分が存在することをこれまで知りませんでした。土壌を「物」として認識する立場と「歴史的自然体」として認識し、土壌を「土壌体」として捉える立場という違いがあるということです。
 「土壌体」は「土壌層位」として現れるものと理解できます。土壌層位すなわち土壌の堆積層は土壌を取り巻く自然の土壌生成活動の歴史的痕跡であるということだと思います。この層位の構造・機能を理解・解明することが「土壌体」を理解し認識することになるものだと思います。

 中塚先生は自然栽培で高い収量をあげていスキャナ 2019-05-06 (2)_1る圃場の土壌の構造的な違いを究明しています。すなわち右の写真で見るように層位ごとの土壌構造の薄片を作成して顕微鏡観察という手法をとっています。このことにより高収量をあげている自然栽培圃場の土壌は下層域にまで膨軟な構造体にあり、対象区との特徴的違いであることを明らかにしています。
 ここで議論している自然栽培とは「化学肥料および農薬、有機肥料や動物性堆肥(魚カス、骨粉、牛糞・豚糞・鶏糞堆肥なども含む)を一切使用することなく、土壌と作物そのものがもつ本来の力を発揮させることで作物を栽培する農法」と定義しています。自然栽培農法の中核は「土壌と作物そのものがもつ本来の力」を発揮させることにあると考えられます。この本来の力は自然の摂理であり、それは均衡系であると理解することができます。この均衡系は総体として理解することが求められます。ペドロジーは土壌体を均衡系としての総体として理解する視座となっているものと感じます。
 総体として認識・理解する術(すべ)をペドロジーは示してくれたと理解できたことが「ありがとうファーム研修会」での最大の収穫でした。
 
 









Yahooブログ終了するそうです。
「里の土壌医」のブログはライブドアブログ http://satonodojoui.blog.jp/ に引っ越すことにしました。
引き続きご愛読をお願いします。


トオルの肖像背景(最少) イブドアブログで「里の土壌医のブログ」を開設しました、土壌医の「里のフクロウ」です。「里の土壌医のブログ」はこれまでヤフーブログに開設していましたが、ヤフーブログが年末で閉鎖されることに伴い、ライブドアブログにお世話になることにしました。
 これまでヤフーブログでの記事については5月中旬以降に引っ越しする予定にしていますが、これまでとは違うプラットフォームで記事を書くこととなりますので、これを機に心新たにして臨みたいと考えています。どうぞよろしくお願いします。



イメージ 1

 「根のデザイン -根が作る食糧と環境 -」(森田茂紀 養賢堂 2003年)を紹介する。
 この本は、イネ・畑作物、果樹、緑化樹木等の「根」にかかわる研究論文を「根をデザインする」という視座で総括・体系化した論文集である。
  根をデザインするというのは、砂漠緑化プロジェクトの過程で、植栽樹木を活着させる手法を試行錯誤するなかで編み出された考えである。
 地上部の茎葉は栽培目的に沿って剪定・摘芯・誘引等によりその姿を整えられる。この考え方を根の形成に適応しようとするものである。
 このためのポイントを、①形態・機能の制御 ②理想的根系 ③形態・機能の評価に集約し、それぞれについての研究成果・課題を総括している。  「根のデザイン」という言葉は、農学としての個々の研究成果を、「理想的な根系」という総体に集約したものを、実学である「農法」へと導いていく諸原理全体をシンボライズするものと感じる。
 望むべきは、「土壌のデザイン」という考え方が学究されることである。そこには当然として「根のデザイン」との学際的研究が期待される。
 そうはいっても、土壌についての専門家を目指す身にとっては、「根のデザイン」を通じて、すでに「土壌のデザイン」という考えが脳裏に芽生えてきていることは必然である。「土壌のデザイン」は、これまで使われてきた「耕起」、「土壌改良」、「育土」とは、かなり意味合いを異にしている。
 それは、「理想の土壌」を描くことが大前提とされ、それを目標としていかに手を加えていくかが問われるからである。
 「根のデザイン」は、土壌の実学を探求するものとして心に留めておくべき「銘」であると気づかされた言葉であった。
 土壌医としての銘は「理想の土壌のデザイン」であると宣言したい。
 




 ハワードの「農業聖典」では、有機農業(脱化学肥料、脱化学農薬主体の農業という意味で)が自然の摂理を具現し、人間の健康と土壌の健康と持続性を保障する道であることを経験具象論の立場から論証したが、それを現代の微生物学と土壌学の知見でハワードの主張の正当性を確証しようとするものである。人の健康と健康な農業生産物の産出は表裏一体の問題であり、近代農業の欠落をパラダイムシフトさせる良書である

イメージ 1

原題
「The Hidden Half of Nature」は、「微生物」の地位を的確に表わした表現だと思う。
 実は自然を動かす同等の役割を担っているのに「見えない」がために、その存在を正当に評価されていない「微生物」を目に見えるように説明しようとしている。
 食料生産の現場である土壌で微生物が果す健康な作物の生長と人間の消化機能を司る内臓で微生物が果す健康への役割とをリンクさせていることで実感できる。
 これこそが自然の摂理であるということであろう。

 アスパラ栽培技術に関連する資料を調査している中で、オークションで手に入れた専門書を紹介します。
 「蔬菜栽培技術5アスパラガス」(沢田英吉 誠文堂新光社)です。今から55年前の昭和37年に出版された古書ですが、驚きが詰まった本です。現在出回っている同類の本とは随分と違いがあります。

 目次を書き出してみます。

 第1章 来歴、現況および将来
  Ⅰ来歴、Ⅱアメリカにおけるアスパラガスの現況と将来
  Ⅲ我が国におけるアスパラガスの現況と将来
 第2章 植物学的性状
  Ⅰ名称、Ⅱ性状、Ⅲ花、Ⅳ果実、Ⅴ種子、Ⅵ発芽、Ⅶ地下茎
  Ⅷ茎、葉および擬葉、Ⅸ根、Ⅹ雌雄株の性状比較
  Ⅺ芽の数と春の若茎数および成茎数
  Ⅻ前年の成茎数と翌春の若茎数
 第3章 環境との関係
  Ⅰ気候とアスパラガス、Ⅱアスパラガスの生長と温度との関係
  Ⅲ土性
 第4章 栽培
  Ⅰ品種、Ⅱ育苗、Ⅲ本圃、Ⅳ苗の定植、Ⅴ肥料、Ⅵ収穫
  Ⅶ採種、Ⅷアスパラガス畑の寿命とその更新、Ⅸ病虫害
 第5章 化学と加工
  Ⅰアスパラガスの化学、Ⅱアスパラガスの加工概説
 追補 アスパラガスの同化能力

 栽培技術を総体的に網羅しつつ、さらに現在でも話題となっているテーマが、すでに取り上げられていることに驚きをもちます。
 例えば、
・「本圃」の項では、圃場選定の要件と土性改良について、
・「苗の定植」では、深植えと浅植えの利害について、
・「肥料」では、過剰施肥への警告と施肥の適正量の検討が、
・「収穫」では適正な収穫期間について、
・「畑の更新」では、アレロパシーがすでに取り上げられる
 など今まさに課題になっている事柄が解説されています。

 新たに発見できた技術や知見があったことも特筆しなければなりません。
・「苗の定植」で定植前に泥に浸す方法や、苗の進行方向をそろ
 定植することの考慮や、
・アレロパシー解消対策として4年間の緑肥栽培でも改善できなか
 った試験成果が紹介されていること、
などです。

 今ここに例示したテーマは、栽培現場で直面する問題や、疑問などにつながるものです。実に現場の人の琴線に直接触れてくれて、寄り添うものです。「そうなんだよ、これを知りたかったのだ」というものです。

 これが、今の時代の栽培技術書には見られないことだと感じます。研究が高度化する現代では「専門」へと進化しているのかもしれません。しかしながらそのことは「分化」への道でもあり、全体像が見えなくなっていることでもあることを痛感させられます。
 全体を見渡すことの実体験をした思いがします。この体験を今後に反映していきたいと思います。


イメージ 1


あけましておめでとうございます。
実に穏やかな新年の幕開けです。
この穏やかさに感謝するとともに、平和と健康を祈ります。

 今年で、土壌医として土づくりをめざして3年を迎えることになります。昨年までは、アスパラの根域生長を促進できる作土層の改善をテーマとして、試験圃場を設けて土づくりの実験を行ってきました。試験圃場の土壌類型は「褐色森林土」です。痩せ地に近い性質の土壌といえるものです。

 この間の土づくりは「団粒化」に焦点がありました。それは痩せ地を肥沃化するためには、「保水性」と「透水性」を兼ね備えた土壌物理性を改善することが先決であり、次いで「生物性」と「化学性」を順次改善していくという考えに基づいているからでした。そして、作土層は10センチから40センチに深化するとともに、団粒化もマクロ団粒に発達し、透水性・保水性ともに改善できています。
 アスパラの樹勢は、茎の太さがL~2Lまで成長してきています。3年株となる今年は、1週間ほどの試験収穫を行うことを考えています。
 現時点での課題は、アスパラの樹高が150~170センチほどまでしか生長していないことです。茎数も10本以下の株も散見されます。この現象から作土は決して十分肥沃なものとなっているわけではないことを想像しています。
 今年は土層断面を露出させ採土して深度に応じた土壌分析を行い実態把握をし、今後の土づくりの方途を深めていきたいと考えています。

 先般、「蔬菜生産技術5 アスパラガス」(沢田英吉 誠文堂新光社 1962年9月) という本を手にすることができました。55年前に出版されたものですが、来歴、環境との関係、栽培技術、化学と加工と実に体系的かつそれらについて精緻に記述されたものと見受けました。アスパラ関連の研究論文、栽培指導書などを読んできましたが、まだまだ至らない自分を感じさせる本との出会いでした。
 本年も引き続きアスパラの根域生長を促進させる作土層の改善をテーマに研鑽を重ねたいと考えていますので、ご指導のほどよろしくお願いいたします。

イメージ 1

イメージ 1

イメージ 1

私がこれまで接してきた農書の中で「感動」を覚えた数少ない一冊である。土壌と作物との関係性を諮る視座が「作物の養分吸収能」で整理統合されたと感じた。

イメージ 1

イメージ 1

↑このページのトップヘ