カテゴリ: アスパラ定植後土壌管理

年(19年)10月27日、アスパラガス改植のための土作りを終わったその日に、もみ殻を堆肥にするための仕込み作業をしました。
 アスパラガスの栽培には、大量の堆肥を必要とします。またアスパラガス圃場への堆肥の投入は植溝や畝間など狭隘な場所を運搬したり、散布作業には労力が求められたりするので、堆肥散布機などの機械力の使用は不適当なところがあります。そのため、堆肥の形状もサラサラになったものが適しています。このために、もみ殻を堆肥の材料にできないかと考えていますが、もみ殻は発酵分解が思うようにいかず手こずっていました。
 試行錯誤の過程で、前回(18年秋)に堆積の都度もみ殻を踏み込で転圧する作業を導入したところ、蓄熱するようになり、中温発酵でもみ殻を発酵分解することに成功しました。今回のもみ殻堆肥化は、昨年の成果を再現し、もみ殻堆肥化技術を固定化することにあります。
 試行錯誤の経験から得た、もみ殻堆肥化成功の要件は、「踏み込み転圧」にあると確信しています。発酵には水分が重要であることは勿論です。
 しかしながら、C/N比に関しては全く考慮する必要がありません。発酵点火材として、リサイクル堆肥を「種」として混ぜました。容積比にして約5:1です。これまで米ぬかや易分解性の有機資材を加えていましたが、全く必要はありません。易分解性の有機資材を投入していないためか、発酵はいわゆる「中温発酵」となります。60±10℃で推移します。
 切り返しは、1カ月後に水分補給を目的に一度だけしました。通気性が良いので酸素の供給は必要としません。一次発酵では中心部分は70度近くまで上昇しますので、中心部は放置しておくと乾燥状態に陥りますので、水分補給が必要となります。二次発酵以降は温度も50度くらいで安定しますので水分の揮発も多くはなさそうです。
 今回のもみ殻堆肥のデータを整理しておきます。
〇もみ殻堆肥の仕込み。
・堆積量:15m3
・種堆肥:2m3
・かん水量:1000リットル
・温度推移
 10月27日;24℃
 11月 1日;52℃
 11月 4日;68℃
 11月 6日;65℃
 事後11月20日まで65℃を維持
 11月27日;56℃。切り返し。堆肥温度10℃
 12月15日;41℃
 12月18日;50℃
 事後2020年1月20日現在まで48℃~50℃を維持

 追記
 20年2月11日現在;46℃。昨年10月27日に仕込んでから3.5カ月が経過しましたが、現在でも十分な発酵分解が進んでいる様子です。


2019-10-27 14.22.16






2019年10月27日仕込み



2019-11-30 11.19.54




2019年11月27日の状態
山が黒褐色に変化しています



2019-11-30 11.53.13




切り返した堆肥の中心部
灰色に乾燥していました
もう少し早めに水分補給しても良かったと思います

 

年作物であるアスパラガスは、定植後は不耕起による土壌管理を余儀なくされます。この環境で定植後の土壌管理、特に中層以下の土壌の物理性を維持する方策についての根拠を求めていたところ、「カバークロップ」と「不耕起栽培」の組み合わせによる栽培方法についてを知ることができました。
 2年前から、赤クローバをアスパラガスの畝間に栽培し、その深根性能による「根耕」の可能性を試験していますが、カバークロップと不耕起栽培の組み合わせによる土壌管理の方法に通じるものがあるのではないかと考え、その根拠となる論議を整理することとしました。

クローバを、アスパラガスの畝間に栽培していることをこれまで紹介してきました。赤クローバは根張りを阻害する土質環境においても、根系を地中深く張り巡らせることができる特色があると聞いています。私の試験圃場は「褐色森林土」というアスパラガスにとって最低の土壌条件にありますが、この土壌を赤クローバが「根耕」する能力を試験しているのです。播種当年度の昨年度において、すでに50㎝の深さまで根系が浸透していることを確認できました。
 張り巡らされた根が枯れ分解されると、そこには筒状の穴(バイオポア)が形成されます。バイオポアは、養水分の移動、通気、土壌動物・微生物の生活空間、新たな植物根の侵入経路、土壌団粒の形成など、多様な機能を持つと同時に、その空間は一つの土壌生態系を構成しています。バイオポアは植物根だけではなく、ミミズなどの土壌動物によって拡充され、その作用は土壌団粒の形成をも拡大させていきます。これらから土壌は膨軟化していきます。このことから「根耕」と呼ばれる訳です。
 
壌生態系は生物多様性の世界です。土壌生態系の構造と機能は階層的です。土壌は様々な土壌生物によって機能的「場」が構成されます。その様相について、「土壌生態学入門」(東海大学出版部 金子信博 2007年 p12)から引用紹介します。
新規ドキュメント 2019-07-05 22.43.01_1
 ここで、デトリタス圏とミミズ生活圏が一つの階層構造として現わされています。地表面に落葉が堆積し、落葉は微生物により分解され、さらにミミズがこれを地中に引きずり込んで食するという構図です。山中で見られるごくありふれた景色といえます。
 ところが、ここに必然的な自然の摂理が潜んでいるのです。それは「落葉が地表面に堆積」しているという事象についてです。稲わらを表面施用と鋤き込み施用し、それぞれにミミズを入れたところ、被覆した場合の方が、無機態窒素量が増加している。これは、ミミズは地表の有機物を孔の中に引き込み、摂食、消化し、廃棄物により低分子化された窒素化合物が土壌中に放出するという、ミミズの生態特性によるものである。(「有機栽培技術の手引き(果樹・茶編)」(一般財団法人日本土壌協会 2013年 p14)
土壌窒素動態で現した土壌生態系は、その環境条件として落葉などの有機物が地表面を被覆していることと、植物根が地中に張り巡らされていることにあります。このような環境の中で土壌生物は「多様な生態系」を構成します。そして多様な生態系は、有機物を高分子化合物、低分子化合物そして無機化へと「分解・同化」して植物へ養分供給するとともに、土壌を「団粒化」して土壌を膨軟にする機能を発揮するのです。(図「土壌中における有機物及び化学肥料由来窒素の動態(模式図)」(同、有機栽培の手引き、p22)

理を人為的に作為した栽培方法が、「カバークロップ」「不耕起栽培」を組み合わせた栽培方法です。そして、カバークロップには、えん麦などの麦系が炭素率が高いため、土壌生態系の涵養効果が大きくなります。
 カバークロップと不耕起栽培を組み合わせた栽培方法での作物生産性は、耕うん栽培との収量差はほとんど見られなかったという報告があります(「カバークロップ利用と不耕起栽培による炭素蓄積と土壌生態系応答」(小松崎将一 2015))。その一方で、土壌生態系が充実して土壌有機物を分解・同化する循環系が機能し、土壌団粒を形成し、その効果が深層までに浸透するようになるまでには、数年(4~5年は必要)の期間を経なければならないという特性もあります。このことを考慮すると、永年作物の栽培には、定植時に耕種的方法によって、土壌深層に至るまでの土作りが求められます。

植するにあたってのアスパラ圃場は、深層に至るまでの土作りを行っていて、その効果は数年間は持続するであろうことを前提とすると、カバークロップと不耕起栽培の組み合わせによる方法をアスパラガス定植後から行ったとしても、数年後には土壌生態系を涵養する可能性を期待することができ、ひいては中層以下の土壌の生物性及び物理性が充実するのではないかと期待するものです。そして、これは持続可能性の高い方法として位置づけることができるのではないかと考えます。
 来年度には、現在の試験圃場の一部に改植を計画しています。改植にあたりこれらの考え方を適応していきたいと思います。



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スパラガス試験圃場畝間の赤クローバは、5月末には草丈30cmほどにまで生長しました。
萌芽しているアスパラガスを覆い隠してしまう勢いに、一見何かの野菜畑と見間違うほどです。2019-05-29 13.55.24








5月29日に一旦刈敷をしました。


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6月30日、元の勢いを取り戻しています。
アスパラは収穫を終え立茎に移行しています。
赤クローバは二度目の刈敷をしています。







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