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図は農水省の作物統計調査資料(2017年長期累年)に基づいて2002年~2017年の15年間にわたる北海道のアスパラガス作付面積と10アール当りの収穫量をグラフに加工したものです。
 10アール当たりの収穫量は、250~300Kgとほぼ横ばいですが、これは道施肥基準に示す400Kgを大きく下回る成績です。歴史を遡ると、1970年代の概ね10年間は350~400Kgの水準を維持していますが、1985年以降からは300Kgを下回るレベルとなっています。35年間低いレベルのままにあるということです。全国平均値は、2013年以降は概ね500Kg以上であり、増加傾向にあります。施設栽培(ハウス栽培)が主体の西南暖地のデータを含んでいますので、露地主体の北海道とは一概には比較はできませんが、本州での反収が増加傾向にあり、北海道では基準を下回るレベルで横ばいにあることは、北海道における反収についての特性を理解できる指標であると思います。
 作付面積については、2,010ヘクタールから1,310ヘクタールと700ヘクタール、35%減少しています。この期間の全国の作付面積は1,100ヘクタールの減少ですから、この70%を北海道が占めていることになります。北海道のアスパラガス作付面積の減少率が大きいことが理解できます。
 作付面積の減少は道全体の収穫量に反映します。この期間の年総収穫量は平均5,200トンですが、2010年以降は漸減し、直近5年間の平均収穫量は4,300トンまで落ち込み、2017年は4,000トンを大きく割り込みました。収穫量の全国シェアは2009年の19.2%をピークにして、2017年は13.2%にまで落ち込んでいます。1924年、北海道においてアスパラガスが最初に栽培され、それから全国第一の産地としての地位を築いてきていますが、それも危ぶまれる現況です。
新規ドキュメント 2020-02-17 10.05.27_1
 一方、2020年2月17日の朝日新聞北海道版にアスパラガス生産農家を目指している新規就農者の記事が掲載されました。アスパラガスの高い経営的価値に着目して持続的営農を目指している若者について紹介しています。
 この若者が考えたように、アスパラガスは本来高い経営的価値を持っているものだと私も考えています。それなのにアスパラガスの生産王国であるはずの北海道では、
 なぜ作付面積が縮小する一方なのでしょうか?
 なぜ低い生産性のままなのでしょうか?
 私は、2003年から2015年まで札幌郊外で2ヘクタールの露地アスパラガスを栽培しました。定年後の新規就農です。12年間のアスパラ栽培は、結果からするとごく普通の経過をたどったことになりました。すなわち、定植後の4~7年目ころは最盛期を迎え、この間は毎年8トン以上を出荷しました。反収としては500~600Kg前後はありました。しかしながらその後、次第に生産量は下降しはじめ、10年目にはピーク時の半分ほどの収量に落ちたところで、私のアスパラ営農は終えることにしました。当初栽培期間を15年ほどと考えていましたので、予定より5年ほど早く畑を閉じることになったわけです。改植と新たに圃場を設けて新植することの2つの方策は検討しましたが、具現するまでには至りませんでした。
 アスパラガスは永年作物です。寒冷地である北海道では15年以上できれば20年くらいは、安定的に生産を持続することが求められます。そして、改植による栽培の継続が滞りなくできることも重要です。これらを具現する技法(農法)が必ずしも確かではないように感じています。
 アスパラガスの高い収量性と持続性ある栽培については、北海道が長年抱えてきている課題と感じます。今後の研究開発が望まれます。